project2 既往最大降雨を考慮した雨水貯留施設詳細設計

【技術部 上下水道部門】神﨑 麻純

1プロジェクト概要

本プロジェクトの目的は、既往最大降雨を考慮した雨水貯留施設の詳細設計です。 雨水貯留施設とは、豪雨が発生した際に浸水被害から人命や住民の財産を守るため、雨水を一旦水槽に貯めて洪水のピークを遅らせるための施設です。 これにより、雨水貯留施設より下流側の浸水被害を軽減することが可能となります。今回の雨水貯留施設設計は、計画用地が駐車場として利用されており、 周辺に駐車場の代替用地がないことから狭小の限られた用地を用いて、貯留規模や配置計画の決定を行い、いかに既往最大降雨に対応した雨水貯留施設を建設するかを検討し、 工事実施のための設計を行うものです。また、貯留施設建設の効果を検証するため、実降雨を用いた貯留状況の検討を行いました。

2検討経緯や苦労した点、技術的工夫

本プロジェクトは、下水道計画、構造(施設)設計、機械設備設計、場内整備設計、地質調査と多岐の分野とに渡っており、 総合建設コンサルタントとしての総合力を発揮できるプロジェクトでした。私はプロジェクトの主担当者として下水道計画及び各分野の取りまとめを行い、プロジェクトを円滑に進めるように努めました。

当初は、10年確率降雨に対応した貯留容量約8,000㎥の施設規模の雨水貯留施設の計画でした。 これを同じ敷地面積を用いて30年確率降雨に対応した雨水貯留施設へ変更計画を行うことが課題でした。問題点は、以下の2点でした。
①計画用地周辺は市街地であり、用地の追加確保ができない。
②雨水貯留施設下流域における雨水幹線の流下能力が不足し、拡幅も不可能でした。

私は、以下の技術的工夫を行いました

①貯留施設規模の変更: HWLを周辺地盤高より高く設定することで【30年確率降雨対応;貯留容量約15,000㎥】 を確保でき、 既設雨水幹線を利用可能となりりました。
②水位線の確認:周辺の窪地側溝からの流入地点において(計画水位)>(地盤高)となったため、地形状況に 着目し、道路の嵩上げを行うことで 施設規模を30年確率降雨対応への変更が可能となりました。

プロジェクトを進める上で苦労した点

プロジェクトの主担当者だった私は、当時入社6年目であり年齢的にも最も若く、先輩方に対して指示する立場であり、 プロジェクトを主体的に引張っていくことが求められました。当社においては、部署を超えたチームワークがあり、 未熟者の私に年齢差を感じさせないよう先輩方から気遣っていただき、プロジェクトを一丸となって完成することができました。

3成果の概要 プロジェクトを終えての感想

●貯留施設のHWLを変更したことで用地面積を変更せずに、10年確率から30年確率降雨対応へ貯留施設規模の変更が可能となったことで、 浸水に対する安全性が高まりました。さらに、既往最大の実降雨による貯留状況の評価を行ったことで、貯留施設の建設効果を定量的に評価でき、 貯留施設より下流域の浸水被害減少が期待されました。
●浸水被害から都市を守るという目標に向かい、会社全体で今回のプロジェクトに取り組めたことは、私にとって大きな財産となりました。 また、プロジェクト全体の取りまとめを行ったことで、工程管理や設計の調整能力の向上につながりました。